2010/07/19

過去からの使者(前編)


小学校低学年の頃、実家のある宮崎県からの帰り、長時間の汽車の中で退屈だろうと、

初めて母が私にマンガ雑誌を買ってくれた。

うれしくてうれしくて、いっしょに買ったバヤリースオレンジの缶ジュースを

チビチビ飲みながらゆっくり読んだ思い出がある。

しかし、それだけ丁寧に読んでおきながら振り返ってみれば、

どんなマンガが掲載されていたのか?ストーリーは?と、ほとんど…と言って良いほど、忘れていた。

覚えていたのは、その雑誌が「少年マガジン」であった事と「ゴキブリ」という名の主人公が

天地の狭い空間を、その名のごとく横這いしているポーズの表紙絵だけである。

なぜかそれだけはハッキリと覚えていた。そして時々それを思い出していた。

「もう一度みたいな…」とは思っていたが、そんな昔のおぼろげな記憶しかない、

読み捨てられて終わりのマンガ雑誌と対面できるなどとは

考えてもいなかった。ところが…          

<つづく>

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